HOME > ユーザーインタビュー > のぞえ総合心療病院・堀川公平理事長インタビュー
レスコ
レスコ
レスコ
電子カルテ Alpha
お問い合わせはこちら

のぞえ総合心療病院・堀川公平理事長インタビュー

 厚生労働省が進める医療制度改革に伴って精神科医療の現場でも、急性期医療を主体とした体制への転換が求められています。 そのような中、福岡県久留米市の「のぞえ総合心療病院」では、医療側と患者側が協調して疾患を克服する『力動的チーム医療』を導入。 平均在院日数を1/40以下に短縮しただけではなく、病院近隣に自立訓練施設や就労移行支援施設を設置し、 患者さんの社会復帰を支援するなど、 極めて先進的な取り組みを実践中です。
 同病院が多職種によるチーム医療を円滑に進める上で重要視しているのが、電子カルテを活用した『情報と情緒の共有』です。 医師はもちろん、院内の全コメディカルスタッフが、電子カルテを軸にチーム医療を推進しておられます。 のぞえ総合心療病院の堀川 公平院長・理事長に、電子カルテ活用の成果を尋ねました。
精神科病院が果たしていない「患者を治療する」責任
 もともと日本の精神科医療は、医療施設と言うより“社会防衛のための収容施設”として発展してきました。 社会適応性を失ってしまった患者さんを、一般社会から“隔離”することが、精神科病院の重要な役割だったのです。
 その役割が、数十年間にわたって法的・経済的に支援されていたのですから、我が国の精神科医療の現場において、 現在でも『薬物療法を中心とした長期入院が当たり前』と考えられているのは、致し方ない状況と言えるでしょう。 私も、留学先のメニンガークリニック(米国)で「力動的チーム医療」のあり方を目にするまでは、日本の精神科医療について疑問を感じてはいましたが、それ以外の在り方など思いつきもしませんでした。
 しかし、深く学べば学ぶほど、日本の精神科医が国民のニーズに十分には対応できず、長期入院させて隔離することで、 「患者さんを治療する」という医療側の本来の責任を逃れている事実に気づかされ、力動的チーム医療というスタイルに、 チャレンジすることにしたわけです。
一般にチーム医療とは、医師や看護師、ソーシャルワーカーや作業療法士、薬剤師などがチームを組んで行う医療のことを 指しますが、当院の「力動的チーム医療」は、これにさらに「患者さんや家族などのチーム」という要素が加わります。 つまり、医療側と医療を受ける側とで、『治療共同体』を形作るわけです。
 そうした治療スタイルを円滑に運営するためには、当然、「情報の共有化」が極めて重要な意味を持つようになります。 組織と職種が広がり、関わる部門が広がってくると、情報をいかに共有して整理し、それをいかに医療に活かしていくかが、 チームを動かす上で最も重要です。では、日々刻々と変化する各患者さんごとの情報を、どうやって全スタッフが 共有するか…と考えた結果、電子カルテ導入という結果が出たのです。
「苦労すべきところ」で苦労できる体制が可能に
 情報を共有できるようになったのはもちろんのこと、医師のムダな作業を省略できるようになった点も、 電子カルテ導入の大きな成果の1つ。
 現行の医療制度の下では、「治療を行う」「カルテを書く」「診断書を書く」「診療報酬を請求する」という4段階で、 同じ事務的作業の重複が必要になります。同じ作業の繰り返しが多すぎる分、医師は治療以外の労力を強いられることになります。我が国の精神科医療が、現代のストレス杜会における多様な精神疾患に、我が国の精神科医療が充分に対応できていないのは、この「ムダが多すぎる」点にも原因があるのではないでしょうか。
 しかし、電子カルテを導入して以降、事務的作業の重複が無くなったことで、医師1人あたりの労力を大幅に削減できるようになり、「苦労すべきところ」で苦労できる体制が整いました。すなわち、医師本来の姿である治療に専念できるようになったわけです。
 この成果は非常に大きく、当院の場合は「力動的チーム医療」を導入する以前までと比較して、患者さんの平均在院日数を2156.2日から57.8日に、平均入院期間を12.5年から0.3年に短縮することができました。
「情緒」も共有することで患者同士のコミュニケーションを図る
 当院で推進している「力動的チーム医療」の最大の特徴は、医師、看護師、そしてコメディカルスタッフの全員による 「医療チーム」に、「患者チーム」という要素が加わることです。したがって、「情報」だけではなく「情緒」も共有するという 作業が、非常に大切です。
 導入した電子カルテにはメール機能もあるので、その機能もフル活用して情緒の共有を図っています。 情報と情緒を共有することで、医療スタッフ同士のコミュニケーションはもちろんのこと、患者さん同士も互いに コミュニケーションを持つことが可能となります。これによってお互いの孤独感を理解し合い、心からの共感を持ちつつ 励ましを得ることで、精神疾患を克服できるわけです。
 情報と情緒の共有を効果的に図るため、当院では毎朝のミーティングにおいて、電子カルテで共有した情報をもとに 様々な部署、職種のスタッフが討論を行います。朝のミーティングで、パソコン上の画面を前方のディスプレに映し出して、全員がそれを見ながら意見を交換する。その様子は、「全員が前を向き、患者さんのことを考える」という 姿勢の象徴と言えるのではないでしょうか。
日本独自の診療報酬制度に振り回されないサポートを
 患者さんの入院期間短縮と、要救急患者のための空床確保、さらに医師とコメディカルとが一体となったチーム医療の推進は、 我が国の大半の精神科病院にとって、“苦痛を伴う改革”と言っても過言では無いかもしれません。 しかし、社会的な流れとして、もちろん精神科医療の流れとしても、入院期間を短縮し、退院後の患者さんを 地域の中で支えていく体制に切り替えざるを得ない状況が迫っています。
 そうした時代の変化を踏まえた精神科医療と病院経営を推進することが、今後、最も重要なことだと言えるでしょう。 この課題を克服するためにも、今後のサポート体制に大いに期待しています。 日本独特の診療報酬制度のあり方を踏まえて、それに振り回されることの無い診療サポートが、 電子カルテには求められているからです。
 それを実現するためには、医師の意見だけではなく、医療に関わる様々な職種のスタッフの意見も、 大いにシステムに反映していただきたいと考えています。 特に当院の場合、病棟以外にデイケア施設、自立訓練施設、就労移行支援施設などを法人内に擁していますから、それら施設のスタッフとも、充分に情報と情緒の共有が図れるサポートを期待しています。