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電子カルテ Alpha
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五稜会病院・中島 公博 理事長インタビュー

 外観上、症状の変化が明確では無いこと、患者自身の「不定愁訴」が、必ずしも治療の指針にならないことなどから、長期にわたる入院が主流だった精神科医療。しかし、2009年に厚労省が発表した医療制度改革案を機に、精神科の病院あるいは診療所においても、他の診療科目と同様の、急性期外来を中心に据えた医療体制への変革が求められています。
 そんな中、札幌市の五稜会病院では、「ストレスケア病棟」を新規開設されたのを機に、旧態依然とした『長期入院・薬物療法中心』の精神科医療をいち早く変革。医師と看護師、ソーシャルワーカー、その他のコメディカルスタッフが患者の情報を共有し、包括的に治療に関わるチーム医療で、入院期間短縮はもちろん、退院時の患者や、その家族からの評価向上も実現しておられます。
 大きく変わった病院の運営面を、円滑化させる一助となっているのが、電子カルテAlpha。全国の精神科医院が目指すべき医療形態を、いち早く実現された五稜会病院の中島 公博理事長に、電子カルテ導入のきっかけや効果について尋ねました。

患者数増加に対応するために院内LANで情報を共有化
―電子カルテ導入以前の課題について

 当院は札幌市の北側に立地しており、人口約27万人の地域内に、民間6箇所・国立1箇所の精神科を持つ病院があるという、そこそこ競争が激しいエリアの病院です。
 精神病床193床に対して、常勤医師7名と非常勤医師5名、精神保健福祉士や作業療法士などコメディカルスタッフが計18名という、札幌市内では、比較的中規模の精神科医療機関だと言えます。
 “ストレス社会”などの言葉がメディアでも頻繁に取り上げられるようになり、高齢者ばかりでなく若い世代の患者さんが増えてきたのに合わせ、平成15年に48床からなる「ストレスケア病棟」を開設したところ、新規患者数も増加し始めました。
 ただ、現役ビジネスマンや学生など、「できれば外来で治療を受けたい、入院が必要だとしても、あまり長くは休めない」という若手患者さんが増えるわけですから、従来のように、長期入院してもらって、のんびり治療するわけにはいかなくなります。その結果、従前の一般精神科病棟を急性期病棟38床と療養病棟に再編し、それまで205床あった病床数を現在の193床に統合。当然、ベッド利用率が下がることになり、その一方で、事務系作業の繁雑さは一気に増大することになりました。
 もともと精神科病院は、精神保健福祉法の絡みから、大量の書類を記入しなければならない宿命を負っていますから、事務作業が繁雑になりすぎると、患者さん1人あたりにかけられる診療時間まで短くせざるを得なくなります。これは何とかしないといけない…と、ストレスケア病棟開設の翌年あたりから、打開策を模索し始めました。

―業務のスマート化

 院内ネットワークの構築です。院内にサーバーを設け、計60台のPCを院内の各要所に配置。グループウェアを活用し、電子メールや電子掲示板、スケジュール管理等の情報共有化が図れる環境を整備しました。情報を共有してコミュニケーションを円滑にすることで、迅速な書類整理など業務効率化を狙ったわけです。
 その翌年には、理事長自らが管理・更新し、職員はいつでも閲覧できる院内ホームページを立ち上げ、病院理念や診療内容、最新トピックなどの「情報公開」、学会・研究会の発表内容、看護研究内容などの「研究内容提供」をスタートさせました。業務マニュアルを電子化したほか、スタッフの勤務表や研修会資料、各種書式をペーパレス化することで、業務のスマート化を図りました。

「院内IT化」の効率運用で診療の質的向上が目指せる
―スタッフの意識が変化する

 当初見込み通り、業務効率が徐々に向上し始め、その分、「チーム医療の質を高める」という方向にスタッフの意識が向かい始めました。
 ご存知の通り精神科医療は、医師だけでは何もできません。医師と看護師、薬剤師、検査技師、栄養士、臨床心理士、作業療法士、PSW、その他様々な職種のコメディカルスタッフが緊密に連携を取り合い、患者さんとそのご家族をサポートしてこそ医療の質を高めることが出来るのです。

―「診療支援システム『アルファ』」の導入

 院内ホームページを立ち上げた翌年、「診療支援システム『アルファ』」を導入しました。院内LANを構築した時点で、いずれは電子カルテが必要だと考えていたのですが、一気にフルシステムにしてしまうと、操作法や入力内容等でスタッフがパニックになる恐れもあったので、まずはオーダリングシステムから入れることにしました。
 その結果、処方オーダや検査オーダ、給食オーダ、病床管理、文書管理等を医事コンピューターと連携させることで、診療報酬の取りこぼしを防ぐことができるようになりました。
 その翌年度、当院の新規患者数は、「ストレスケア病棟」開設前の約2倍にあたる1500人余となりましたが、それまでに構築してきた院内LANとオーダリングシステムのおかげで、診療の質を落とさずに対応することが可能でした。

―オーダリングシステムから電子カルテへ。より質の高い医療を目指して。

 スタッフがオーダリングシステムの扱いに充分慣れ、さらにシステム活用の有意性が浸透した平成22年秋、紙カルテから電子カルテへの抜本改革に踏み切りました。
 その年の2月、久留米市の「のぞえ総合心療病院」を見学に訪れたことが、電子カルテに踏み切るきっかけになりました。のぞえ病院では、当院よりさらに先進的な「外来中心・長期入院患者のアウトリーチ」を実践しておられ、そのための方策として電子カルテを有効活用しておられましたから。

電子カルテ運用開始今後の課題と目標
―運用現場とシステム開発との連携。新しい業務フローの確立。

 スタッフには、オーダリングシステムを入れた段階で「いずれ紙カルテを電子カルテに変える」という計画を伝えていましたから、比較的スムーズだったと言えます。
 ただし、紙カルテを電子化するのは、カルテの運用ルールを大幅に見直す必要がありましたし、現場ニーズとシステムには細かな相違点もあったため、運用直前まで電子カルテ制作会社さんと、システムの再検討や要望書の提出などを行いました。稼働までには、院内のIT化委員が中心となって、システムの核となる「マスタ」を作成し、さらに開発元とともにリハーサルを実施しながら不具合を再調整し、スタートにこぎ着けました。
 双方の歩み寄りにより、カルテ電子化のための新たな業務フローが作成されたわけですが、この作業は現在も進行中です。

―電子カルテ導入のメリット

 諸々のメリットが発生したわけですが、代表的なものをあげると、多職種間の情報が閲覧できるようになり、患者さんの情報の共有化できるようになった点、いつでもどこでもカルテ記載が可能なので、記録が楽になった点、文書管理システムにおいては、診療録からの転記により書類作成が容易になった点、さらに医事コンピューターと連動させることで、精神療法などの記載が直接コストに反映するようになった点などですね。
 電子カルテの導入過程で業務フローチャートを作成したため、各職種の業務運用を改めて見直すことができた点も、副次的な、しかし大きなメリットと言えるでしょう。

―今後の課題について

 院内情報システムや電子カルテ導入は、それそのものが直接利益に結びつくわけではないので、電子カルテを活用し、いかに病床の稼働率を向上させるか、専門療法の件数を増やすか、治療レベルを向上させるかが、今後の課題と言えます。
 ストレスケア病棟の治療プラグラムを充実させるなどで診療の質を上げ、評判の良い病院づくりを推進することも課題ですね。当院は、平成25年から新病等建設に着手する予定です。新しい病棟で、さらに先進的な精神科医療を実践するためにも、電子カルテ活用を通じて経営管理に役立つデータの抽出を考えたいと思います。